ぼくはマサイ:ライオンの大地で育つ

ジョゼフ・レマソライ・レクトン著 さくまゆみこ訳 
さ・え・ら書房 2006年 中学生から

遊牧民の子どもとしてケニア北部に生まれた著者が、10代の終わりにはアメリカの大学に留学し、教職を得るようになるまでを綴っている。幼少のサバンナでの暮らしぶりや学校の様子、厳しい境遇の中から援助者を見つけだすバイタリティなど、その波瀾に富んだ日々が生き生きと描かれ、とてもおもしろい。著者は西欧文化を学んでも、先祖伝来の文化を手放しはせず、ケニアの遊牧民たちが自分たちの言語、文化、伝統を守れるよう援助したり、子どもたちが教育を受けられる機会を増やすため活動している。伝統と近代の双方の世界を自在に行き来し、その掛け橋となっている著者の存在がユニークで、グローバル化が進む世界へのひとつの指針ともなる。