炎の鎖をつないで:南アフリカの子どもたち

ビヴァリー・ナイドゥー作 さくまゆみこ訳
偕成社 1997年 小学校高学年から

南アフリカで行われていたアパルトヘイトの実態を15歳の少女の目を通して描いている。生まれ育った土地から不毛の地へ強制移住を命じられた村の人々の反応、抗議に立ち上がった子どもたちへの仕打ち……。リアルな描写に胸がつぶれる。アパルトヘイトについて史料的な本はあるが、その中で人々がどのように思い、行動し始めるようになったのか、その揺れる心持ちを知るにはこのような小説を手に取るのが一番だと思う。歴史的事実の裏には、必ず無名の多くの人の思いがあふれているのだということを本書は教えてくれるだろう。原書は古い(1989年)が、訳者後書きでそれ以降の南アフリカの状況を補足している。