歌う悪霊:北アフリカサエル地方の昔話から

ナセル・ケミル文 エムル・オルン絵 カンゾウ・シマダ訳
小峰書店 2004年 小学校高学年から

昔、ひどく貧しい一家があり、男は悪霊の住む荒れ野を自分の麦畑にしようと決意する。まず足下のイバラを1本引き抜くと、地底から歌声が響いてきた。「おまえは、そこで、なにをしている?………いったい、………なにを?」男が答えると、「てつだってやる!」と悪霊たちが現れて……!? 作者はチュニジア生まれの映画監督で物語作家。現れるたびに倍に倍にと悪霊の数が増えていき、取り返しのつかない悲劇に陥るまで、読者はぐいぐい引き込まれてしまう。強烈な物語の力と凄みのある絵画がひとつになってリアルに迫り、救いのない結末に至る。昔話絵本の形をとってはいるが、圧倒的な表現力と深い読後感を味わえる。中高生に手にとってもらいたい1冊だ。