みんながそろう日:モロッコの風のなかで

ヨーケ・ファン・レーウェン&マリカ・ブライン作 野坂悦子訳
すずき出版 2009年 小学校高学年から

モロッコの女性マリカ・ブラインの実体験を元にオランダの作家ファン・レーウェンが書いた作品。1960〜70年代、カサブランカでは、学生や市民の抗議行動が頻発していた。そんな不安定な社会情勢の中、主人公の少女ジマは、貧しいながら愛情あふれる家で育つ。ある日、町で学生運動をした容疑で兄が投獄される。家族は自分たちも逮捕される危険を感じながら、差し入れや面会をし、できる限り兄を支える。病弱な母を助ける間に、幼かったジマも、家族の力になるまでに成長していく。できごとは悲痛だが、少女の感性で語られることで、さわやかな物語になっている。正義を貫くことの意義、家族愛の大切さだけでなく、モロッコの暮らしや事情を垣間見ることもできる。