山の上の火:エチオピアのたのしいお話

ハロルド・クーランダー&ウルフ・レスロー文 渡辺茂男訳
岩波書店 岩波おはなしの本 1963年 小学校中学年から

エチオピアのお話15編を集めた昔話集。寒い山の頂に、食べ物も水も着物も毛布も火もなしに一晩はだかで立っていられたら家畜と土地をやると言われた若者は、見事やりとげるが、向かいの山の火を見ていたと言われ、約束のものをもらえない。機知を働かせた若者が、どうやって約束を果たさせたかという表題作をはじめ、りこう者やまぬけ、ごうつくばりなど、人間味あふれる人々が登場する話はどれも楽しく、クスリと笑ったり、あきれたり感心したりしながら、ひきつけられる。言葉遣いにやや古めかしい部分があり、子どもが自分からは手にとりにくいが、1編読んでやると、ほかの話も読みたくなりそうだ。力強い線画がお話の世界をふくらませている。