ツツ大主教:南アフリカの黒人差別・アパルトヘイト(人種隔離)政策に対してたたかう勇敢な大主教
デイビッド・ウィナー著 箕浦万里子訳
偕成社 伝記世界を変えた人々 1991年 小学校高学年から
1931年に南アフリカの貧しい黒人町に生まれたデズモンド・ツツは、大学を卒業して教師になるが、黒人に充分な教育を受けさせることを阻む「バンツー教育法」の施行で教職をあきらめて神学校に行き、司祭への道を歩み始める。本書は1984年にノーベル平和賞を受けたツツ大主教の伝記だが、個人の歴史にとどまらず、南アフリカの悪名高きアパルトヘイト体制がどのようなものだったか、ツツや黒人たちはそれとどのように闘ったのかについて、ていねいな記述がなされていて、わかりやすい。ただし原著は1989年に出版されたものなので、今後の再版時には、1994年の民主化とその後の様子もつけ加えてもらえると、さらによいのではないだろうか。